膨らまない話。

Tyurico's blog

相手の気持ちになるというのは全くの難事であるが、

相手の立場に立って考えてみることならさほど難しくはない。
 

まあそれで共感したり納得したりするとは限らないが、少なくとも「ああ、あれはこういうことだったのか」ということは後でわかったりはする。
 

宗教と価値の多様性は相容れないのではないか

多様性を尊重しよう、多様な価値があることを認めよう、っていうのはもう近年では疑問を抱くことも許されないような考え方だと思うが、その中に宗教まで含んだ場合はどうだろう。(数年後に読み返して考えると、多様性を認めない国や文化も少なくないというか勢力を増しているような。)
 
宗教というものは徹底すればそもそも多様な価値の併存を許さないものだと考えられ、もし多様な価値が等しく存在することを認めたなら実のところそれは宗教としてはもう終わってしまうんじゃないだろうか。突きつめれば共存することのできない文字通り不倶戴天の在り方だ。
 

「彼らの信仰も尊重しましょう」という寛容な姿勢は、別様に言うなら「そういう程度の低い土着の考え方もやっぱり尊重してあげないといけないよね」というような余裕をかましたゆるい態度であって、自分たちの信仰の絶対性において行動する人たちにとってそのような態度は信仰の形骸ですらなく全く意味が無いものだろう。
話にもならない。
 
世の宗教が「世の中には私たちとは違った宗教が色々あります。考え方はそれぞれです。正否や優劣というものはありません。ですから違いは問わず否定せず皆仲良くしましょう。」っていう前提を掲げるというのはほとんど考えられないことだし、まったく厄介な話だ。
 
 
 
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音楽コラムサイト TAP the POP の誤解を生じさせる駄目な記事

TAP the POP という音楽コラムのサイトがあって、複数のライターによって様々なジャンルの音楽記事が毎日のように上げられている。ためになる記事も少なくないと思うが、数がやたらと多いだけに中にはちゃんと調べずに書いた不正確な記事も目に付き、最近ではこんな記述があった。
 

カリブの植民地のなかで、いち早く独立を果たした(1962年8月)のは英国領のジャマイカだった。結束の強さの秘密はどこにあったのか。
ジャマイカの民衆の心の根っ子には、どっこい簡単にはひねりつぶせない力が秘められていた。
それこそが、人々の心をひとつに結んだレゲエと祈り
黒人の救済と解放を本義とする、宗教的思想運動、「ラスタファリ」という名のファイティングスピリットだった。

 
カリブの小国、ジャマイカ叛乱の唄 「ハーダー・ゼイ・カム」|月刊キヨシ|TAP the POP

 
これを読めば、レゲエは古くからジャマイカにある音楽であり、反骨と抵抗の音楽であるレゲエがジャマイカ独立の力になった、みたいな誤解が生じてしまうだろう。(しばらくぶりに再び記事を見てみたら、知らないうちにこの文章から「レゲエ」という文字が削除されていた。)
 
しかしレゲエが生まれたのはジャマイカが独立してから何年も後のことなんだから、ジャマイカの独立にレゲエは全く関係していない。それにレゲエだっていきなり誕生したわけではなくて、独立後のジャマイカの音楽シーンではまずスカが生まれてその次にロックステディが生まれ、それからレゲエが生まれるという変遷がある。この文章はその辺りに少しも触れないままレゲエとジャマイカの独立を全くデタラメに結び付けていると言わざるを得ない。
それから「人々の心をひとつに結んだ」とか不確かなことをさらっと断定的に書いてるけど、ジャマイカの宗教の主流と言ったら今もかつてもやはりキリスト教のはずで、ラスタファリというけっこう特殊な思想運動が当時のジャマイカでそんなに一般的なものだったのかと言えば、それはかなり疑わしい。まあ少なくともラスタファリが人々の心をひとつに結んだ、なんてのは与太話の類いだ。
 
スカ、ロックステディ、レゲエ、色々あって単純な図式では語ることができないジャマイカ音楽の流れを知らないまま筆者が若い頃に得た乏しい知識だけでコラムを書いてしまった結果なのか、それとも知ってはいるんだけど面倒くさいしその辺を省いて単純な「レゲエとジャマイカ独立の物語」を仕立ててしまった結果なのか。どちらにしても肯うことはできない。
TAP the POP というサイトは、「本物の音楽」が持つ“繋がり”や“物語”を毎日コラム配信、という立派な文句を看板に掲げているが、少なくともこの記事が語っている“繋がり”や“物語”は「本物」ではない。事実と違う「お話」に過ぎない。

しかし間違いより何より一番問題であるのは、編集責任というような立場の人間がいるんだかいないんだか知らないが知らないが、このサイトはこういう40年前のレベルの文章にチェックも入らずそのまま掲載されてしまうという点だろう。
 
「物語」も結構だが、「物語」が優先になっちゃって「都合良くまとめたお話」や「事実の確認を怠った思い込み」なんか載せてたら駄目だ。
素人がブログ書いてるんじゃないんだから。
それとも「物語」ってのは「作り話」って意味だろうか。

 
思い出せば TAP the POP って昨年、スカというジャンルを語る際に絶対に外すことのできないプリンス・バスターが亡くなった時も何の記事も出なかったし、どうもジャマイカ音楽方面はお留守になってる感じだ。タップ ザ ポップ tapthepopTAPthePOP
 
 

Lord Creator - Independent Jamaica
1962年、ジャマイカ独立を歌った音楽がこんな感じだ。もちろんレゲエではないしスカでもない。それにロード・クリエイターはジャマイカンじゃなくてトリニダード・トバゴの出身の歌手だ。
 
 

PRINCE BUSTER - Blackhead chinaman (1963 Prince Buster)
1963年、プリンス・バスターの曲。これはもうスカ。というかこれぞスカという感じ。
 
 

Prince Buster Al Capone
1964年、バスターの「アル・カポーン」。あるいは「アル・カポネ」。

 
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バグルスの売れなかったセカンドアルバムはもっと知られるべき名盤

買ってみようかと思いつつそのままになっていたバグルスセカンドアルバムのことをふと思い出し、買って聴いてみたら一発でものすごく気に入ってしまった。

古い話で恐縮だが、バグルスでわからない人も「ラジオスターの悲劇」なら知ってるかもしれない。あるいは知らずとも耳にしたことがあるかもしれない。
しかし「ラジオスターの悲劇」が非常にインパクトの強いヒット曲だったのにそれ以外の曲が知られていないため「一発屋」扱いされかねないユニットで、実際バグルスとしての活動はこの1981年のセカンドアルバムを以て終えている。


モダンレコーディングの冒険』。
オリジナルの9曲にボーナストラック10曲を追加収録。このボートラがまたいい。

Adventures in Modern Recording

Adventures in Modern Recording

  • アーティスト:Buggles
  • 出版社/メーカー: Salvo
  • 発売日: 2010/02/23
  • メディア: CD

色々とごたごたもあって、アルバム名義はバグルスなのだが実質ほぼトレヴァー・ホーン一人によるアルバムと言うべきものらしい。トレヴァー・ホーンってやっぱりすごい人なんだ。
 
モダンレコーディングの冒険』というデカい表題に誇張はない。これを知ることができて良かった。
 


Buggles - Lenny
 


The Buggles Rainbow Warrior
 


Buggles - I Am A Camera
この曲のベース好きだ。
 

最後にファーストアルバムから「ラジオスターの悲劇」。1979年。

Video Killed the Radio Star Lyrics
これはほんと傑作だと思う。
 
こちらがファーストアルバム。 

プラスティックの中の未来+9

プラスティックの中の未来+9

  • アーティスト:バグルス
  • 出版社/メーカー: ユニバーサル ミュージック
  • 発売日: 2015/11/04
  • メディア: CD