膨らまない話。

Tyurico's blog

スカとレゲエの最初の世界的ヒット曲は意外に古いのだった

スカもレゲエも実はごく初期に普通のポップスの体裁で世界的なヒット曲を出している。どちらもよく売れて日本でもレコードが発売された。
 
1964年、ミリ―・スモールの My Boy Lollipop。

Millie Small My Boy Lollipop Original) YouTube
スカにハーモニカというのがちょっと珍しい。ウィキペディアによると、もともとはホーンだったパートをハーモニカに替えたらしい。それでよりポップス寄りになっている感じ。

My Boy Lollipop: the Best of

My Boy Lollipop: the Best of

  • アーティスト:Millie
  • Spectrum
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「新リズム スカ 登場!!
プロデューサーはアイランド・レコードを創業したイギリス人、クリス・ブラックウェル。この世界的大ヒットを足掛かりにアイランドは発展したとのこと。
「唄」という表記や330円という価格に時代を感じる。でもよく考えれば1964年頃にシングル盤330円って結構な値段か。してみるとレコードって高い物だったんだな。



1968年、デズモンド・デッカーの Israelites。 

Desmond Dekker-Israelites
ミュージックビデオはおそらくイギリスで撮影されたものだろう。いわゆる「レゲエ」のイメージとはだいぶ違った雰囲気だし、最初に聴いたときはこれがレゲエだとは思わなかった。

  


邦題は「イスラエルちゃん」なんて残念なタイトル。
 

この曲は1969年のものだという記述も時々見られるが、写真の通り、1968年のリリース。最も初期のレゲエの一枚と言うことができる。
プロデューサーはレスリー・コング*1 
彼はジャマイカの音楽に大きく貢献したのだが、残念ながらレゲエが本格的に流行る前、1971年に30代で若死にしてしまった。
 
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*1:レスリー・コング Leslie Kong(1933-1971) デズモンド・デッカーの他にも、ウェイラーズ、トゥーツ&ザ・メイタルズ、ジミー・クリフ、デリック・モーガンといったミュージシャンのプロデュースを手掛けた。中国系のジャマイカンで、「コング」と表記されるが、たぶん発音は鼻音で実際はむしろ「コン」に近いのではないかと思う。

ラジオの音楽番組でピーター・バラカンさんが意外に思えることを語っていた。

ピーター・バラカンさんが今月の放送で、1968年のデズモンド・デッカーのヒット曲、Israelites を流してから当時のイギリスを思い出して以下のように語っていたのが意外で印象に残った。(当時の些細な話というのは些細なことだけにほとんどは後に残らない。それゆえにむしろ実はけっこう大事なものだと思う。録音しといたものをほぼ言葉通りに文字に起こした。一部ゲストの受け答えがあったが内容に影響しないので省略した。)
 

この曲もね、ラジオで当時もう毎日のようにかかってて、まったく何を歌っているかがわからない(笑い)。あまりにも訛り、訛りっていうかあれはいわゆるクレオール語みたいなもので。
 
でもね当時、ラジオでもうほんと毎日のようにかかってたから、脳裏に焼き付いているんだけど、嫌いっていうかねあの、音楽が嫌いじゃなくてね、ジャマイカの音楽を一番好んで聴いていたのがねスキンヘッズだったんで、当時のイギリスでは。
それはけっこう怖い方々、もうめちゃくちゃ怖いです。僕みたいに長髪でまあちょっとややヒッピーっぽい恰好をしていた人間は、彼らはもう目の敵にしてるからね。で、家に地下鉄の駅からバスで帰ってくるんだけど、バス停の真ん前にね、安いハンバーガー屋があったんですよ。
そのハンバーガー屋にもうスキンヘッズがいつも一杯たむろしていて、バスを降りるのが怖くてね。

 
これがその曲。 Israelites
イスラエルちゃん」なんて変な邦題にされてしまったが、このヒット曲は日本でも発売された。でも歌詞の内容は、朝から奴隷のように働いて、それなのに女房子供は出て行っちまった、ああ俺は哀れな、っていうようなの。

Desmond Dekker & The Aces - "Israelites" (Official Audio)
 

デズモンド・デッカーはジャマイカンだから、もちろんイギリスの英語とは違ってるんだろうが、それにしても英語ネイティブのバラカンさんが当時デッカーの歌を聞き取れなかったと語っていたのは私には全く意外なことだった。英語を母語として話す人間でもわからなかったのか。*1 *2
また、「スキンヘッズ」って言葉とか写真とか知ってはいたんだけど、当時のリアルな感覚、体験として話が聞けたのは貴重だった。やっぱ怖い連中だったんだ。 
 
あと、昔バラカンさんも長髪だったということも今となっては結構意外な事実。
 
 

The Best of Desmond Dekker

The Best of Desmond Dekker

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*1:それでも「パトワ」というほどには崩れてないと思うのだが。

*2:後で調べてみたら、Wikipedia にも Although few could understand all the lyrics, the single was the first UK reggae number one、歌詞を全て理解できる人はほとんどいなかったにもかかわらずこの曲は英国で云々、と書いてあった。やはりそうなのか。

やっぱりプリンス・バスターって面白いミュージシャンだと思う。

バスターってラスタにはならずにイスラム教徒になってしまったくらいでレゲエの時代に名前を聞くことは少ないのだが、彼のやってることって、早くもスカの時代にリディムに乗せてトースティングをしてるようなものだと思う。なんか非常に斬新。新しい。*1
 
1964年。Al Capone、「アル・カポネ」。メロディのないキラーチューン。ところでキラーチューンって和製英語か?

Prince Buster Al Capone
最初のセリフ、「アゥカポーンガンズ ドンハーギュー」とか聞こえて、何を言ってるのかよくわからなかったのだが、どうも Al Capone guns don't argueアル・カポネの銃は問答無用だ、って言ってるようだ。アル・カポネは悪名高いアメリカのマフィアのボス。



1979年、スペシャルズのこの曲は Gangsters というタイトルだが、Al Capone のリディムに新しい歌詞とメロディを乗せたものと言っていいだろう。車の急ブレーキの音とか、Don't call me scar face ってセリフとかはオリジナルを踏襲してたわけだ。以前はボーカルばかりに耳が行ったが聴き直すと演奏も良いのね。

The Specials - Gangsters (Official Music Video)


大阪のスカバンドデタミネーションズとの共演。2003年。やっぱこの曲がかかると盛り上がるなあ。

Determinations & Prince Buster - Al Capone
 

最初全く乗り気でなかったバスターだがリハでデタミネーションズの演奏を聴いているうちにどんどんノッて来て大成功、というライブだった模様。バスターがゴキゲンになってくれて良かった。このライブアルバム、いいですよ。


スカタライツとの共演。たぶん1984年のイベント REGGAE SUNSPLASH の映像だと思う。しかしバスターがあまり「ルードボーイ」っぽくない感じ。

Prince Buster feat Skatalites Al Capone



これは2012年だったか?オーストラリアのバンド、メルボルン・スカ・オーケストラによるカバー

Melbourne Ska Orchestra - Al Capone (Originally by Prince Buster)



これはよくわからないが、Interskalactic というアイルランドのバンドらしい。しかし金髪お姉さんとサックスって様になるな。

Interskalactic - Al Capone




↓今回書いてて見つけたこれ、とにかく記事が面白すぎる。CDも買っとこう。
ototoy.jp
 


rollingstonejapan.com

 

*1:またバスターは、おそらく曲で相手を「ディスる」ということを世界で最初にやったミュージシャンだと思われる。1963年のBlackhead Chinaman。それに対して相手のデリック・モーガンも即座にBlazing Fireで返してやりあった。

『世界の果てまでイッテQ』を見てて、BGMがメルボルン・スカ・オーケストラ?と思ったが

『世界の果てまでイッテQ』(宮川大輔さんの「ナマズ祭り」の時)を見てたら、BGMがメルボルン・スカ・オーケストラの「ゲット・スマート」?と思ったのだが、アレンジが違う。

Melbourne Ska Orchestra - Get Smart (Official FULL Version)
 
 
探してみると元の曲があった。1960年代に放送されたスパイ物のコメディ、Get Smartのテーマだった。

Get Smart Original Theme
 
 
こちらは2008年の劇場版。イッテQのはこっちだな。

Get Smart Movie Intro
 
 
tyurico.hatenablog.com

 
 

「空耳アワー」にキング・タビーが。

タモリ倶楽部の「空耳アワー」にキング・タビーが。
 

そう言われてみると良い子ですね
 

元ネタ曲。 

King Tubby - Gorgon Speaks Version 
「ガーガン」より「ゴルゴン」か「ゴーゴン」の方が適切かな。 
  
 
まあこっちが大元なのか。Versionじゃないオリジナルの。*1

Cornell Campbell - The Gorgon Speaks
この曲いいな。

 
 
キング・タビーの他のをもう少し。タビーさん、王冠取ると結構後退してた。

King Tubby - Dub I Can Feel
スピーカーの修理か改造でもしてるんだろうか。
 
 

King Tubby - Cannabis Dub (Heavenless)
 
 

Best Of

Best Of

 
I Shall Not Remove: 1975-1980

I Shall Not Remove: 1975-1980

 

こちらは同曲も収録したコーネル・キャンベルのアルバム紹介記事。「つれづれげえ日記」さんのレゲエアルバムレビューのブログ。とにかく圧倒的な量。おすすめ。
teckiu.blog.jp
 

*1:レゲエにおけるこの Version というのは、「リミックスバージョン」とか言う場合のような一般的な意味とは全く違っていて、ごく簡単に言うと原曲からボーカルを抜いて演奏メインにアレンジした曲のことを意味する。