膨らまない話。

Tyurico's blog

電脳×緑雨 あるいはヒネクレモノ古今ふたり

少し前、実家のケーブルTVで押井守監督の『イノセンス』を深夜やっているのを途中からなんとなく見ていた。
昔一度DVDを借りて見たことがある。その時は気づかなかったが今回ぼんやり見ていると、登場人物が斎藤緑雨の警句を口にしている。
 
「刀を鳥に加えて鳥の血に悲しめども、魚に加えて魚の血に悲しまず。声ある者は幸福也。」
 
これより少し前に中村光夫の『二葉亭四迷伝』を読み返していて、この言葉が巻頭言として記されていたのでたまたま気づいたのだった。そこではこの後に 「今のいわゆる詩人は幸福也。」 と続いている。

ちょっと気になって検索してみると、古今東西の警句や箴言が劇中に数多く引用されていて、それらの言葉を調べてまとめたようなサイトもあり、それを見ると緑雨の言葉は中でも多く七つ八つが引用されていた。
しかしまさか『攻殻機動隊』に緑雨の取り合わせとは。
 
斎藤緑雨寸鉄警句を以て聞こえた明治の作家で、今日その小説が読まれることはまず無いが警抜な言葉の方はなお命脈を保っていて、『緑雨警語』という本もまだ買うことができるようだ。で、映画から緑雨のことを知った人たちがこの『緑雨警語』を買い求めているのも見受けられた。これでまた長生きをする。

しかし七つ八つも引用するとは押井監督は緑雨が趣味であるということなのか。
二人の人物を考えてみるとわからなくもない。