膨らまない話。

Tyurico's blog

オーパーツみたいな河野通勢の自画像

オーパーツ」なんて書いたけど、別にオカルトめいた話ではない。
 
しかし、彼が1917年(大正6年)に描いたとされる一枚の自画像は、宗教的でありながら不思議と現代性すら感じさせるような精緻なリアリズムで描かれていて、なぜ当時の日本でこのような傑作がと思わせる類例のないものであり、そして彼自身もこの後これに並ぶ出来の作品を残すことはついになく、言いにくいがこの傑作に比べると他の作品はかなり見劣りするものが多く、要するにこの一つが奇妙に突出している。
また、彼の生涯にはよくわかっていないこと、解せないことも多く、それで「オーパーツ」などという言葉を使った。
 
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河野通勢、「こうの みちせい」と読む。
1895年、明治28年の生まれ。1950年に没する。この絵は彼が22歳の時ということになる。岸田劉生のリアリズムの傑作『古屋君の肖像』が1916年、劉生25歳の作品であるから、劉生の影響があるとしてもやはりこれは驚くべき作品である。


一般的に言って、顔のしわまで余さず描き込むような徹底した写実的描写は生々しいもの、時にはグロテスクなものにもなる。また徹底した写実的描写というのは念入りな作業でもあるので、どうしても絵がしつこい、くどいものになりがちでもある。
しかしこの絵にはそういうところがなく、生身の人間のリアルな描写を突き詰めているのにそれがむしろ静かで澄んだ精神性を感じさせるものにまで高められている。
 
この絵を一度見てみたいとかねがね思っているのだが、残念なことに収蔵しているのはアメリカの美術館だということだ。
 
河野通勢 - Wikipedia
 
Kohno Michisei - Wikipedia