三波春夫のヒット曲は「チャンチキおけさ」であるが、この歌詞は奇妙である。「知らぬ同士が小皿たたいてチャンチキおけさ」というのであるが、ここで歌われている「チャンチキおけさ」とは、いかなる歌か。三波春夫のデビュー以前に「チャンチキおけさ」という歌はあったか? ない。ない歌を歌うことはできない。
だから「知らぬ同士が小皿たたいて」歌っていたのは「チャンチキおけさ」ではなく、別の「おけさ」というジャンルの歌だと思われる。しかし、三波春夫の「チャンチキおけさ」がヒットすることによって、本当に「チャンチキおけさ」を歌うようになったのである。「知らぬ同士が小皿たたいてチャンチキおけさ」を歌うようになったのである。
興味深い。
言われる通り、曲中で酔客が「チャンチキおけさ」という歌を歌っているようについ思ってしまうが、なるほど、この歌以前に「チャンチキおけさ」があったわけではないのだ。
それからちょっと思いついて、「チャンチキ」で調べたらこういうのが出てきた。
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たぶん「チャンチキ」というのは皿を箸で叩く音の表現ではないかと何となく調べてみたのだが、これは鉦を叩く音の表現であり、それが道具の呼び名ともなっているということがわかった。なんとそもそも「チャンチキ」という道具があったのだ。
だからたぶん、「チャンチキおけさ」とは皿を箸で叩きながら「おけさ」を歌っている様を表している。
あと、「おけさ」というのもてっきり一般的な民謡の形式みたいなものだと思っていたのだが、もっと狭いもので「佐渡おけさ」に代表されるように新潟県の民謡に限られるらしい。
そういえば三波春夫さんの生まれも新潟だった。
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