膨らまない話。

Tyurico's blog

キング・トーンズはドゥーワップじゃないし、R&Bチャート 48位も嘘だと山下達郎さんがラジオで力説していた。

3月31日のサンデーソングブックは内田正人さん追悼の「ザ・キング・トーンズ」特集だった。
その中で山下達郎さんが、どうしても言わなきゃならないこととして力説していた。
達郎さんがそこまで言うのだ、何はともあれ書き残しておこう。
 

今日と来週のキング・トーンズ特集で、どうしても申し上げなきゃいけないことがありましてですね、無駄と知りつつ申し上げますけれども、キング・トーンズはドゥーワップ・グループじゃありません!
 
彼らの音楽的原点であるプラターズの全盛期の活動というのは、厳密にはドゥーワップ・グループとは定義されていませんでした。
ただ、もう今はアメリカの文化史も相当アバウトになっちゃったんで、今みんな一緒くたにされてしまった結果そうなりました。
ましてドゥーワップはおろかですね、バーバーショップ、オープンハーモニー、ジュビリースタイル、カルテットスタイル、そうしたコーラススタイルに関する明確な音楽的説明が今やもうまったくなされなくなった今の時代の中ですと、キング・トーンズは結果的に「近似値としてのドゥーワップ」というカテゴライズでしか日本では選択の余地がなかったんで、ドゥーワップということになります。

 
蛇足ですけども、鈴木雅之山下達郎以前には日本のメディアで「ドゥーワップ」という単語はありませんでした。
ドゥーワップ」自体が60年代以降の用語で造語でありますので、キング・トーンズのみなさんが自分たちがドゥーワップ・スタイルと意識したことは、それは後付けであります。これだけは言っておかなきゃならない。

 

もうひとつですが、いまウィキペディアとかそういうデータを見てると、「グッドナイト・ベイビー」はアメリカでアトコのレーベルから発売されまして、ビルボードのR&Bチャートで48位を取ったという、これは虚報です。
私の知り合いのそうしたチャートのエキスパートに四人確認を取りましたけれども、全員が否定しました。R&Bチャートに入っておりませんし、もしくは全米チャートにも入っていません。
ただひとつ、キャッシュ・ボックスの1969年の5月に最高114位という、このランキングが記録に残る唯一のものです。上柴とおるさんからうかがいました。

アメリカでも発売されたというのは本当だ。でも今と違ってアメリカのチャートのデータなんか知りようもない当時のことだから、宣伝のために日本のレコード会社がそういう事実無根のキャッチコピーを書いたなんてのはありそうなことだ。
  

でもそれを今もうほんとに検証することなしに拡散するんです、一般メディアがね。で、「グッドナイトベイビー」はビルボードのR&Bチャートに入ったんだと。
でもそれ嘘ですので。

だからといって、彼らのステイタスが傷つくとか、そんなこと全然ありません。実力とは関係ない話なんですけれども、データは正確にやらないと駄目だという。
やっぱネット時代のですね、弊害があります。

私がネットで調べたくらいでは確認できない話だが、たしかに「R&Bチャート48位」という根拠は全く見つからなかった。結局どの記事も確認をせずに伝聞をただ書き写しているだけなのだろう。
プロのライターとが書いてる記事もそうで、ほんと書くにあたって調べるということをやってないんだよな。いや、プロとして仕事として次々と記事を書いていかなきゃならない事情があるから調べや確認が疎かになってテキトーになってしまって、だから時間の制約なしでやっている熱心な素人の方がかえって行き届いてたりするんだろうな。私が Tap The Pop とか U Discover Music なんかよりもむしろ熱心な個人のブログの記述の方を頼りにするのはこういう事情による。
 
プロのライターは「こっちは趣味や遊びでやってるんじゃないんだ」と逆ギレするかもしれないが、だったらもう少しちゃんと調べろと正直思う。調べるのが昔よりもはるかに容易にできる現在なんだから。
 
 
「でもそれを今もうほんとに検証することなしに拡散するんです、一般メディアがね。」
www.tapthepop.net
 
 
 

Let’s Dance Baby  ザ・キングトーンズ&マリエ
 
 

 
amass.jp


達郎さんはドゥーワップへの思い入れの強さといったら一方ではないし、キング・トーンズの特集も二週にわたる熱の入ったものだった。だから流布しているいいかげんな言説は正したいんだろう。
 

次の話も興味深い。そうだったんだ。

で、1974年にですね、キング・トーンズに若い作家が曲を提供して、それをキャラメルママがバックでアルバムを作ろうというそういう企画がありまして、そのことについては私、何度か語ってまいりました。
その企画に賛同して伊藤銀次と私と、書いた曲が「ダウンタウン」はじめ三曲なんですけど、結果、曲を書いたのが私と伊藤銀次と二人きりだったもので、結局企画が流れてしまいまして、で、もったいないんで「ダウンタウン」、自分のシュガーベイブのレコードとして発表することになったんですけど、

 

Sugar Babe (シュガーベイブ) - Downtown
外国人の青年かな、こういう曲をアップする時代。
 

上柴とおるのポップス再前線
ポップス再前線

さて、全米リリースされたとはいえ、やはり日本語盤ではなかなかしんどいです。坂本九の「Sukiyaki」(1963年6月:3週間米No.1)も日本語そのもので出てましたが、以降キントン盤が出た1969年まで日本人歌手は全米チャートとは全く無縁でした。ビルボード誌のHOT100にも100位圏外にも入らずに終わったという認識でおりましたが、後年、いろいろな資料を入手してみて「えっ!」。唯一、CB誌(キャッシュ・ボックス)にはランク・インしていたのでありました~!とはいえ最高114位(1969年5月)でしたけど。。。日本人による海外‘輸出‘を研究してる身と致しましては(毎年、大学の授業でも取り上げてます)、痕跡を残してくれただけでも感激ですわ♪

 
merurido.jp
 
キングトーンズ R&Bチャート 48位 - Google 検索