膨らまない話。

Tyurico's blog

ピカソの「ゲルニカ」ってなぜああいう描き方なのか

ピカソの「ゲルニカ」という作品はなぜああいう抽象的というのか非写実の描き方なのかというのが長らく引っ掛かっている。

それはまずあの時のスタイルだからなんだろうし、だいたいピカソはあの爆撃の惨状を自分の眼で見たわけではないのでそれをあたかも見てきたかのようにつぶさに描くことはそもそも出来ないということもあるだろう。
 
正しく言えば「ゲルニカ」は抽象絵画ではない。
しかしこの絵は「固有性や具体性を取り去った後に現れてくるもの」という意味で抽象であると言える。
あの時ゲルニカという街にいて理不尽に命を奪われたそれぞれの顔だちと名前を持った個々の具体的な人々は最初から捨象されているのであり、具体的なものはただタイトルの「ゲルニカ」という固有名ばかりだ。
描かれているのは抽象なのではなくむしろ概念だと言った方がいいか。


「個人の固有性と具体性を剥ぎ取られるのが戦争という暴力なのであってだからこそピカソはこのような表現を」、というような考え方も可能だとは思うが、だとしたらそれはもう絵というより理屈に類するものだ。

私がピカソの「ゲルニカ」に困惑しか感じることがないのはたぶんこういうようなことかと思う。
 
まあそもそもの話、どんな作品だろうと強いて感動したり努めて神妙な気持ちになる必要なんか少しもないんだし。

それにしても、もうまっさらな気持ちで見ることは誰もできないような絵というのも厄介なことだ。
 
 

暗幕のゲルニカ

暗幕のゲルニカ

ゲルニカ物語―ピカソと現代史 (岩波新書)

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