膨らまない話。

Tyurico's blog

プリンス・バスターの「ワン ステップ ビヨンド」って意味は

「一歩踏み出せ」、「一歩向こうへ」ということだろうか。
 

これは2003年、大阪のスカバンドデタミネーションズと一緒にやった時の。曲前の喋りでそんな感じのメッセージをバスターが語っている。(動画はその箇所から再生されます。)
「行く手を山が阻んでいる、そんな時。ああ、なんてこったと言う奴もいる。上等だ、やってやるぜと言う奴もいる。」意訳ね。

イントロからかっこいいなー。


 
オリジナル。1964年。

PRINCE BUSTER - ONE STEP BEYOND

 
これはマッドネスによるカバー。1979年。

Madness - One Step Beyond (Official Video)
 
冒頭のセリフを読んではじめて気づいたのだが、すごい韻を踏んでたんだな。

Hey you, don't watch that, watch this
This is the heavy heavy monster sound
The nuttiest sound around
So if you've come in off the street
And you're beginning to feel the heat
Well, listen Buster
You better start to move your feet
To the rockiest, rock-steady beat
of Madness
One step beyond
 

「表に出て来い、バスターを聴け」ってことかな。ただ、rock-steady beat って言ってるけどこの曲はスカだと思う。
 
 
ところで、実はアメリカの古いテレビ番組で One Step Beyond というのがあった。1959年から1961年にかけて放送された。
日本で放送された時のタイトル、『世にも不思議な物語』から察せられるように、この One Step Beyond というのは「日常の世界から一歩越えて不可思議な非日常の世界へ行ってしまう」という感じなんだろう。(後年のフジテレビ制作の『世にも奇妙な物語』という番組のタイトルもこれがルーツであるに違いない。)


世にも不思議な物語 1 「時空を超えた再会」(1/2)


案外、バスターもここから言葉を得たのではないか。すると「もう一歩足を出せ」ってよりも「未踏の領域へ踏み出せ」って感じだろうか。
放送時期はスカが生まれる少し前で時間的にも整合するし、その頃ジャマイカサウンドシステムをやっていた人間は流行りの音楽をアメリカから仕入れてたわけだから、十分あり得る話だと思う。*1
 
またバスターの別の曲 Al Capone では Al Capone guns don't argue ってセリフが冒頭に入るのだが、これも50年代に Guns don't argue っていうギャング物の映画があったようで、たぶんそこから来てるんじゃないか。*2
  
 
しかしさらに調べていたら、1963年のジャズのアルバムで One Step Beyond というのもあった。(アルバムタイトルで、同名の曲は収録されていない。)「フランケンシュタイン」とか「ゴーストタウン」とかホラーものっぽいタイトルの曲もある。

One Step Beyond

One Step Beyond

Amazon
こっちの可能性もあるな。。

 
最後にスカパラの。これは冒頭のセリフからまんまマッドネスのカバー。

TSPO -one step beyond
 
  
ジャマイカ音楽史初期におけるサウンドシステム・ビジネス事情と歴史的名盤 - ワールド・レゲエ・ニュース by ダブストア
 

*1:サウンドシステムというのはすごく簡単に言うと「移動式野外ディスコ」。ジャマイカオリジナルの音楽が生まれる以前はアメリカの最新のレコードを手に入れてそれをかける、というやり方で、どんな手を使っててでも他のサウンドシステムよりも新しい曲、盛り上がる曲を手に入れるということが重要だった。

*2:テレビ版をまとめて映画にしたものらしく、テレビ放送時のタイトルはなんと Gang Busters 。