膨らまない話。

Tyurico's blog

屋根のてっぺんに花を植える住まい

 

 
幕末の日本にやって来た英国のプラントハンター、ロバート・フォーチュンの本を読んでいる。
プラントハンターって書くと珍しい植物で一攫千金狙いの山師みたいにも聞こえてしまうが、フォーチュンという人は何よりまず植物、園芸が好きでたまらない人だったようだ。本書にはそういう人の驚きや興奮があちこちに綴られている。そういう人が江戸時代幕末の日本に来たらそれこそたまらないだろう。なにせ当時世界一と言っていい園芸大国だったんだから。

その中で、ほとんどの農家の茅葺き屋根のてっぺんにはイチハツが生えているという記述(第三章 途中の景色)がわからなくて、「イチハツ」って何だろうとネットで調べてみた。すぐ調べられるから今は便利だ。
 
イチハツはアヤメの仲間で、昔は茅葺き屋根のてっぺんに補強の目的でよく植えられていた。根が補強の役割をする。これを「芝棟」という。イチハツの原産地は中国と考えられるが、日本の農家の屋根に植わっていたのを西洋人が見て、それで Japanese Roof Iris なんて英語名もある、など。
生えていたのではなく、目的があって植えていたのだ。

亘理芝棟コレクション


さて、調べている時にあるブログが、フランスのノルマンディー地方の家の屋根にはアイリスが植えられている、と書いているのを見つけた。

ノルマンディー地方の貸別荘に一夏滞在した時、ほとんどの茅葺屋根の上にジャーマンアイリスが植わっていた。どうして?と聞くと、ジャーマンアイリスの根で屋根頂上部(大棟)がしっかり固定されるとの事だった。

Salon des Fontaines

それで Normandy roof Iris で画像検索したら出る出る。ノルマンディー地方では現在でもこの伝統を保存するようつとめているようだ。
normandy roof iris - Google 検索
 
ノルマンディー地方と日本では屋根を葺く材料は違うらしいのだが、てっぺんにアヤメの類を植えているのは全く同じだ。植物ならなんでもいいというのではなくアヤメという種類まで共通している事実がより一層興味深い。根張りがいいのかな。
 

茅葺き屋根の上につくる芝棟 - エスカルゴの国から
↑こちらのブログはかなり掘り下げていてたいへん参考になったのだが、やはりそれでもわからないのは、この日本とフランスの伝統の一致は偶然であるのかそれとも共通のルーツがあるのかということと、その他の地域で同様のものは見られないのかということ。
 
そこで屋根にタンポポを植えた家とか造る藤森照信先生だったら言及してやしないか、とか思ってたらやはりあった。↓『フジモリ式建築入門』。
これは読んでみましょう。
茅葺き屋根の上の草花: 轟亭の小人閑居日記 馬場紘二
 
tozai-as.or.jp