膨らまない話。

Tyurico's blog

音楽コラムサイト TAP the POP の誤解を生じさせる駄目な記事

TAP the POP という音楽コラムのサイトがあって、複数のライターによって様々なジャンルの音楽記事が毎日のように上げられている。ためになる記事も少なくないので読んでいるが、数がやたらと多いだけに中にはずいぶん程度の低いものもある。つい最近のでこんな記述があった。
 

カリブの植民地のなかで、いち早く独立を果たした(1962年8月)のは英国領のジャマイカだった。結束の強さの秘密はどこにあったのか。
ジャマイカの民衆の心の根っ子には、どっこい簡単にはひねりつぶせない力が秘められていた。
それこそが、人々の心をひとつに結んだレゲエと祈り。
黒人の救済と解放を本義とする、宗教的思想運動、「ラスタファリ」という名のファイティングスピリットだった。

 
カリブの小国、ジャマイカ叛乱の唄 「ハーダー・ゼイ・カム」|月刊キヨシ|TAP the POP

 
これを読めば、レゲエは古くからジャマイカにある音楽であり、反骨と抵抗の音楽であるレゲエ(の精神)がジャマイカ独立の力になった、みたいな誤解が生じてしまうだろう。(しばらく後に再び記事を見てみたら、文章から「レゲエ」という文字が削除されていた。)

しかしレゲエが生まれたのはジャマイカが独立してから何年も後のことなんだから、ジャマイカの独立にレゲエは全く関係していない。それにレゲエだっていきなり誕生したわけではなくて、独立後のジャマイカの音楽シーンではまずスカが生まれてその次にロックステディが生まれ、それからレゲエが生まれるという変遷がある。この文章はその辺りに少しも触れないままレゲエとジャマイカの独立を全くデタラメに結び付けていると言わざるを得ない。
それから「人々の心をひとつに結んだ」とか書いてあるけど、ジャマイカの宗教の主流と言ったら今もかつてもやはりキリスト教のはずで、ラスタファリというけっこう特殊な思想運動が当時のジャマイカでそんなに一般的なものだったの?っていうもっと素朴な疑問もある。
 
スカ、ロックステディ、レゲエ、ダブ、色々あって単純な図式では語ることができないジャマイカ音楽の流れを知らないまま筆者が若い頃に得た乏しい知識だけでコラムを書いてしまった結果なのか、それとも知ってはいるのだがもう面倒だしそこを省いて単純な「レゲエとジャマイカ独立の物語」を仕立ててしまった結果なのか。どちらにしても肯うことはできない。
TAP the POP というサイトは、「本物の音楽」が持つ“繋がり”や“物語”を毎日コラム配信、という文句を看板に掲げているが、少なくともこの記事が語っている“繋がり”や“物語”は「本物」ではない。筆者の間違った思い込みに過ぎない。

しかし間違いより何より一番問題であるのは、編集責任というような立場の人間がいるのだかわからないが、このサイトはこういう40年前のレベルの文章にもチェックが入らずそのまま掲載されてしまうという点だろう。

「物語」=「都合良くまとめられたお話」であるべきではない。
 
 
思い出せば TAP the POPって昨年、スカというジャンルを語る際に絶対に外すことのできないプリンス・バスターが亡くなった時も何の記事も出なかったし、どうもジャマイカ音楽方面は総じて弱いみたいだ。タップ ザ ポップ tapthepopTAPthePOP
 
 

Lord Creator - Independent Jamaica
1962年、ジャマイカ独立を歌った音楽がこんな感じだ。スカではないしもちろんレゲエではない。それにロード・クリエイターはジャマイカンじゃなくてトリニダード・トバゴの出身の歌手だ。
 
 

PRINCE BUSTER - Blackhead chinaman (1963 Prince Buster)
1963年、プリンス・バスターの曲。これはもうスカ。
 
 

Prince Buster - Al Capone
1964年、バスターの「アル・カポーン」。あるいは「アル・カポネ」。

 
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