膨らまない話。

Tyurico's blog

ピーター・トッシュが「歩くカミソリ」と呼ばれていたという話は本当なのか

 
ブログにウェイラーズのことを書いてる時にふと思ったのだが、ピーター・トッシュが「歩くカミソリ」 "Stepping Razor" と呼ばれていたという話の出どころみたいなものを読んだことがない。トッシュというと直ちに「歩くカミソリ」と嬉しそうに語る人ばかりだが、みな又聞きで誰も元の話については語っていない。
それで調べてみたのだが、さっぱり見つからない。英語の Wikipedia とかも読んだのだがそんな記述は何も出てこなかったし、それどころか何だかあやしい話に思えてきた。
 
というのは、トッシュが "Stepping Razor" と呼ばれていたという逸話とか証言とかは全く見つからないのだが、「"Stepping Razor" はカバー曲である」という記述があって、それで今度は曲の方を調べていったところ、「 "Steppin' Razor" はもともとジョー・ヒッグスが作った曲で、それをクレジット無しでトッシュがアルバムに収録したものだからそれで裁判になって、結局ジョー・ヒッグスに権利があることが確定した」という記述が出てきたからなのだ。*1 
ジョー・ヒッグスはウェイラーズの先輩で、彼らの師匠とか言われたりもする人だ。
とすれば本当のところは、"Steppin' Razor" をヒッグスに無断でカバーしたらそれが見事にはまってオリジナル以上に有名になって、とうとうそれがトッシュの異名にまでなってしまった、というだけの話のように思える。*2
 
昔も今も、ミュージシャンが若いころ凄いワルだった、ヤバい奴だったという話は変に好まれる。そういうイメージの期待がよくある。
これも実は根の無い話で、そういうことでしかないのかも。


もしどなたか仔細をご存じの方あればご教示ください。
 

Peter Tosh - Stepping Razor (HD)
 

JOE HIGGS - STEPPIN' RAZOR
 訴訟
 
tyurico.hatenablog.com
 
 

Blackman Know Yourself

Blackman Know Yourself

Amazon
 
ピーター・トッシュ 歩くカミソリ - Google 検索

*1:Higgs wrote "Steppin' Razor" in 1967 as his entry in the Festival Song Contest, later recorded by Tosh without crediting Higgs. Higgs later won a court case to establish his rights as composer but never received any profits from the song's success. ジョー・ヒッグスについての Wikipedia の記事より。

*2:ヒッグスのアルバム "Blackman Know Yourself" のアマゾンレビューにこんな指摘があった。The song's lyrics don't even make sense for Peter Tosh, who at 6' 5" seemed an unlikely author of the lyric "I'm like a stepping razor don't watch my size, I'm dangerous." The diminutive Higgs wrote those words, of course.  要するに、トッシュは身長が190㎝以上もあるのに「オレは歩くカミソリ、サイズでオレを判断すると危険だぜ」って歌詞はおかしいだろ、もちろんこの歌詞は小柄なヒッグスが書いたものだ、と書かれている。

ジャマイカ大使館の人に知ってもらいたいレゲエブログ 「つれづれげえ日記」

スカやロックステディは少ないけど、レゲエのアルバム紹介はめちゃくちゃ多いこちらのブログ。
 
teckiu.blog.jp


書いているのはけっこう年配の方みたいだ。
 
とにかく記事が多くまた頻繁に更新されるブログで、すでに数百枚のアルバムが紹介されているようだが、たぶん遠からず1,000枚を超えると思う。
全然知らない名前が次々と出てきてジャマイカって小さい国なのにどんだけミュージシャンがいるんだと驚いてしまう。


レゲエで何か調べたいときはここに行くというか普通に検索していても結局ここに行き着くような、よくお世話になっているブログ。

ブログ世界遺産推薦。
いや冗談でなくジャマイカ政府から表彰されてもいいレベルだと思う。
これで英語訳がついたらなー。ポップカルチャーって時間がたてば散逸し埋もれていくものがほとんどだからこれだけのボリュームがあればもう貴重な記録だと思う。
 
 

ジャマイカで一番のおしゃれミュージシャン

全くの個人的意見だけど、デリック・モーガン*1
なんだかおしゃれだなと前々から思ってはいたのだが、最近出たCDのジャケット写真にはびっくりした。
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PEOPLE DECISION

PEOPLE DECISION

アルバムは1977年らしいが、彼は1940年の生まれだからこの若々しい姿はもっと前の写真かもしれない。
古さを感じないカッコよさ。
 


Derrick Morgan - Stand By Me
これはスタンド・バイ・ミーのカバー。
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基本、帽子というのが彼のスタイルみたい。これも帽子もシャツもセンスがいい。


Derrick Morgan - Tougher Than Though (Rudie In Court)



Derrick Morgan Two Times
この曲が一番好き。ミニマルなピアノもくせになる。
だがこの頃はもうすっかり太ってしまっていて、ジャケットの写真もぜんぜんオシャレじゃないのが残念。動画の写真は若い頃の。
 

*1:グレゴリー・アイザックスもオシャレでカッコいいが。

メルボルン・スカ・オーケストラ

これが2013年に出たファーストアルバムだが、結成は1993年だというから実はもう25年近くやってるバンド。
You Tubeでちょっと見て、アマゾンは高かったが楽天で2,000円ほどだったので買ってみた。
見ての通りの大人数バンド。
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[rakuten:book:16429489:detail]
メルボルン・スカ・オーケストラ
国内盤はボーナストラック一曲追加
 

Melbourne Ska Orchestra

Melbourne Ska Orchestra

こっちは輸入盤。ジャケットが国内盤と全然違う。知らない人への訴求力は弱いだろうがこのデザインもかっこいい。
 


Melbourne Ska Orchestra - Get Smart (Official FULL Version)
豪勢で賑やかでこれはライブが楽しそうなバンド。おっさん含有率が高いのも良し。なんか2トーンのカッコ良さとブルース・ブラザーズの楽しさをミックスしたような雰囲気。
 


Melbourne Ska Orchestra - The Best Things In Life Are Free
もちろんオーストラリアのバンド。リーダーのニッキ―・ボンバという人はジョン・バトラー・トリオというバンドのドラマーで、ジョン・バトラー・トリオはオーストラリアではかなりの人気バンドらしい。知らなかった。この曲のボーカルはパット・パウエル(Pat Powell)という人。
 


Melbourne Ska Orchestra - Paradiso
この曲もいい。
ニッキ―・ボンバという人はすごく歌が上手いわけではないが好きな声だ。
 


Melbourne Ska Orchestra - Third Time Lucky (Official Music Video)

 


Melbourne Ska Orchestra - Learn to love again
女性ボーカルの曲もある。
 


Melbourne Ska Orchestra - The Diplomat



 

ジムビーム『エネルギッシュ・ダウンタウン』篇 30秒 ローラ サントリー CM
去年の暮れにはサントリーのCMに出てたらしい。これも知らなかった。しかしこんな賑やかしみたいな無駄な起用をしても意味がない。もっと彼らを格好良く使ってほしい。Melbourne ska orchestra
 
www.youtube.com

ソングライターとしてのトゥーツ・ヒバート

トゥーツ&ザ・メイタルズのトゥーツ・ヒバートはローリング・ストーン誌による「100人のシンガー」に入っているくらいだから、ボーカルとしての評価は昔から高い。もちろんこんな記事を書いている私も彼の声と歌が大好きだ。

しかし彼はまたオリジナリティの高いソングライターとしても評価されるべきだと私はかねがね思っているのだが、そういうことを述べたものを今まで読んだことがない。というわけで私がここに書く。

Monkey Man, Pressure Drop, Funky Kingston といった代表曲以外で個性的で魅力的な曲を年代順に紹介していきます。

 
1963年。

Six and Seven Books - The Maytals
当時どういう事情だったのか、 The Vikings という違う名前でもレコードを勝手に出されていたらしい。コクソン・ドッドのプロデュースとなってるから演奏はスカタライツだろうか。*1



1964年。 

Toots & the Maytals (as The Flames) - Broadway Jungle
お猿の鳴き真似も楽しい。これはまた The Flames という名前でレコードを出されていた。プリンス・バスターのプロデュースとなっている。ということはスタジオが違うわけでこれはスカタライツの演奏ではないということか。*2



1968年。

the Maytals - Just tell me  
これはロックステディでいいんだろうか。上の2曲とは違ってポップな感じの良い曲。服装が厚着なのが意外なんだけど、ジャマイカでも場所によってはけっこう冷えるんだろうか。
コーヒーで有名なブルーマウンテンってジャマイカだったな。標高2256mもあるのか。なら場所によっては冷えるな。
ブルーマウンテン山脈 (ジャマイカ) - Wikipedia



1969年。

Sweet and Dandy - Original



1974年、だと思う。

Toots and The Maytals - Revolution
トゥーツは似たものがちょっと思いつかない独特な曲を作る。この曲ほんと大好き。



1974年。

Toots And The Maytals - Love Gonna Walk Out On Me



1979年。

Toots & the Maytals My Love Is So Strong
実にトゥーツらしいパワフルなボーカル。


1979年。

www.youtube.com



1983年。 

Toots & The Maytals - Spiritual Healing
ジャマイカの音楽はアメリカの音楽の影響を強く受けているのだが、トゥーツは特にそれが強いみたいで、この曲なんかすごくソウルっぽいテイスト。
スカ、ロックステディ、レゲエの時代をずっと活動してきたトゥーツだが、たぶん彼はラスタではなくドレッドにもしないし Jah とか言わない。だからレゲエ・ミュージシャン、っていう言い方もなんだかで、ちょっとジャンルで語りにくいところがある。まあジャンル分けなどどうでもいいのだが。この曲のドラムとベースはおそらくスライ&ロビー。*3 
 
 

  
tyurico.hatenablog.com

 

*1:コンピレーションアルバム Time Tough のライナーノーツの記載による。

*2:同じく Time Tough のライナーノーツの記載による。

*3:Rasta Man なんて曲もあるし、後年のアルバム Light Your Light ではあまり似合ってないドレッド姿も披露しているが、たぶんそういうのは「一応ちょっとやっておくか」くらいの感じじゃないかと思う。