武田惣角という伝説的な武道家がいた。
惣角は幕末安政6年の生まれ、合気道のルーツである大東流合気柔術の達人で、「伝説の武道家」なんて書いたが、惣角は昭和まで存命していたからその武勇伝などはいろいろと伝えられているし写真だってけっこう残っている。だから不確かな存在なんかではない。
とはいえやはり「それ本当か?」って思うような話もあり、その中に、惣角は濡らした手ぬぐい一本で相手の骨を折った、みたいな話がある。ネット上でも見かける。
それを読んで昔、戯れに濡らした手ぬぐいを振り回してみたことがあるのだが、「さすがにこれは無理だろ」という感想に終わった。
しかし今夏猛暑の折りにクーラーが故障して、対策に手ぬぐいを濡らして首から掛けたりするようになり、ふと思いついて半分に折った濡れ手ぬぐいで反対側の腕を打ってみたころ、これがかなり強い衝撃になった。痛い。
濡れ手ぬぐいを長いまま振るのではなく、二つ折りにして振ってみるとこれが大違いなのだった。
いや素人でこれなら、達人は本当に濡れ手ぬぐいで骨をも砕いたかもしれない。
何でも試してみるもんだ。
たぶん惣角も二つ折りにした手ぬぐいを使ったんじゃないかな。