たとえばお笑いタレントのトークなんかで「いやこないだカクカクシカジカこんな腹立つことがありまして、」みたいに自分の腹が立った体験を話して、
最後に「それって信じられます? ありえへんでしょ!」って感じの話。
まず関西弁の間違いがありましたらご容赦ください。
だがこの「ありえへん!」、「有り得へん」って言い方は「怒り」というものを実に端的に言い表していると思う。
思うに人が何事かに怒るということは、それがつまらない私憤であろうが理のある義憤であろうが、要するに「そんなことはあってはならない」、「それは有るまじき事だ」と固く思っているからなのだ。
そして、その怒りが正しくても正しくなくても、「有るまじき事だ」と考えるのは結局のところその人の「こうあるべきだ」という認識と実際とのギャップなのだと言える。*1
要するに自分の意に沿わない実状、自分の意に反している現実に対して怒りが生れている。もっと身も蓋もなく言うなら、自分の思い通りでないことに怒りが生まれるのだ。
だから、「ああ、そういうことだったんだ。」とか「うん、そういうもんだよね。」とか納得がいって認識と実際とのギャップが消失してしまうと怒りは成立し得なくなる。*2
それから、怒りへの共感を求める「ホンマ腹立ちましたわ、こんなんありえへんでしょ!?」というアピールに対しては、「いやそれ怒るようなことちゃうやろ、お前がありえんわ。」という冷ややかな反応もあり得るわけだ。