膨らまない話。

Tyurico's blog

レゲエのダブとかリディムとかの説明をある曲を例として調べつつ書いてみる

レゲエを聴くようになってレゲエに関するものを読むようになって、するとそこに出てくる「リディム」とか「ダブ」という言葉がよくわからない。「リディム」は「リズム」から、「ダブ」は「ダビング」から来てるらしい。
それでいろいろ調べて読んでみたのだが、どうしても文章の説明だけだと「ダブ」だの「リディム」だの「バージョン」だのというレゲエ特有のワードは理解が難しい。あれこれ聴いているうちにようやく少しずつなんとなくわかってきたというのが正直なところだ。

そういうわけで、その辺を知らない人にもわかりやすいように具体的にある曲を例としてその展開を年代順に書いてみることにしました。
なにぶんよくわかってない人間が自分の理解を整理するため調べながら書いたもの、記述に間違いがありましたらご指摘ください。
 

これが元々の曲、「ボルチモア」。レゲエではない。
1977年、ランディ・ニューマンが作詞作曲して歌った曲。
ランディ・ニューマンアメリカのシンガーソングライターで、映画『トイ・ストーリ―』の主題歌なんかも彼の作品。

Randy Newman - Baltimore
 
それを1年後の1978年にニーナ・シモンがカバーしたもの。
ニーナ・シモンは1933年生まれのアメリカの女性シンガー。当時もうベテランと言っていいだろうが、これはレゲエのアレンジになっている。1978年だから時代はボブ・マーリーの存在が世界的になっている頃で、レゲエを取り入れるのが最新のアレンジということだったのかもしれない。Wikipediaによるとレゲエアレンジはプロデューサーの提案で、でもニーナ・シモンはそれが嫌だったらしい。

www.youtube.com
 

そのまた1年後らしい、これはジャマイカの三人組タムリンズによるもの。スライ&ロビーのプロデュース。
おそらく、ニーナ・シモンのレゲエ・アレンジの方にインスパイアされてこれができたという順番かと思う。レゲエ=ドレッドってわけでもないのね。特に初期は。

The Tamlins - Baltimore 
 
上と同じタムリンズのだが、この動画は後半にボーカル抜きの曲、レゲエの世界で Version ヴァージョンと言われるのが入っている。

7'' The Tamlins - Baltimore (& Dub)
レゲエのシングルでは、B面には同じ曲のボーカル抜きのヴァージョンを入れて出来上がり、という手抜きにも思える作り方が普通だったらしい。とにかくスピード重視だったのかな。
レゲエでボーカル部分が抜けるというのは、言い換えるとメロディーが抜けてリズムの部分だけが残る、ってことかなと思う。

Taxi Fare

Taxi Fare

  • アーティスト:Sly & Robbie
  • ユニバーサル ミュージック
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手に入れられるタムリンズのCDは多くない。このスラロビの一枚にボルチモアが収録されている。
 
 
これはタムリンズの曲のダブ。手がけているのは Paul "Groucho" Smykle(ポール・グルーチョ・スマイクル)という人らしい。(彼のことは調べたことがあるのだがほとんど情報が得られなかった。)

SLY & ROBBIE_Demolition city
ヴァージョンはボーカルを抜いた処理が基本で原曲とそう大きく違わないが、ダブはボーカルを抜いた曲を更にもっといろいろ加工していじって別の曲として仕立ててしまう。こうなるともうクレジットを誰にすべきなのかよくわからないし、実際これも曲のタイトルが全く変わってたりする。
Reggae Greats

Reggae Greats

Amazon
 
 
サイエンティストによるダブ。ただこれは演奏も新しく録ってるように思える。「サイエンティスト」っていう芸名。

Scientist - Taxi To Baltimore Dub
記事を書くにあたって初めて聴いたが、これも良いな。
上のと違って、サイエンティストのは印象的なホーンと鍵盤のパートを使ってないのが特色。最初サムネの画像を見たとき雑巾で拭いているのかと思ってしまった。
Scientist Dub

Scientist Dub

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イラストが表すように、ダブの仕事は歌うわけでも曲を作るわけでも楽器を演奏するわけでもなくスタジオで機器を操作してやる仕事で二次的創作とも言えるが、ちゃんと名前を冠した一個のクリエィションとなっているのが面白い。


で、そこから更に「ボルチモア リディム」という独立したリディムが確立して、それに乗っけていろんなアーティストが自分の歌をやる、みたいなやり方もできてくる。
だから他の曲からも「なんとかリディム」というそれぞれの名前を持ったリディムがいろいろ生まれてるわけで、そういう既存のリディムを使って新しい曲を作るなんて具合。
こういうのはジャマイカ特有、ジャマイカ以外にはないやり方だと思う。面白い。
しかしまたこれは「過去の作品を素材として使っちゃう」ってやり方なわけで、今の時代に広く見られる手法の先駆けとも言えるかもしれない。
https://marshallneeko.bandcamp.com/album/various-altimore-riddim-2019marshallneeko.bandcamp.com
 

BALTIMORE RIDDIM - TAXI RECORDS

https://www.youtube.com/results?search_query=BALTIMORE+RIDDIM

 
リディムガイドなんて専門の情報サイトもあるのね。「ボルチモア リディム」のデータのページ。
www.riddimguide.com
 

1977年。1978年。
 
2023 6月追記
Paul "Groucho" Smykle のインタビューがあった。インタビュアーは David Katz だった。
daily.redbullmusicacademy.com